「…アスラン?」

アスランは全てを忘れていた。

シャワーや食べ物がなんなのか…じっと見つめるだけ。

しゃべりすら知らない…。

なんだか人形みたいだ。

「…ねぇ、アスラン」

「……」

 ジッ

アスランは僕をチラッと見るだけ。

無関心な目。

何を言っても…解らない……かな?

「…」

でも、ま、いっか。

今は、アスランが生きていただけでも。

「アスラン、家に一人で…いさせるのは心配だから、
 一緒に学校行こう。保健室で休んでても構わないから」

そういって僕はアスランを引っ張る。

アスランは小さく頷いた。

(…少しは解るんだ)













「お早うー!」

「お早う、キラ」

サイが挨拶した。

隣にはミリアリア、トール、カズイがいる。

フレイはいないようだ。

「よかったな、帰ってきて」

トールが言う。

「うん。
 でも、なんにもしゃべらないからやりづらくて」

「もー贅沢言わないの!」

ミリアリアは苦笑する。

「そうだけどさぁ…」

「……でも、本当に何も解らないの?」

「うん」

だって、何一つしゃべらないんだもん。

「……」

「これじゃあ、次のテスト、アスランさがるな」

「あ、確かに!」

トールの言葉にカズイが手をぽんとたたく。

「サイ、狙えるぞー!」

「…はは」

「こらー!トール!」

「うわー…ミリー御免〜!」

何時もどおりの日常のはずなのに…。

違ったんだ。

何時もどおりなんかじゃなかった。



キーンコーンカーンコーン



「これから、テストを始める!」



何か、嫌なことが――――。